亜硫酸について [醸造学]
先週、ワイナリーに新しい装置が届いた。
醸造長に、ちょっと試しにやっといてと言われ
仕事後に組み立てて、使ってみる。
これは、ワインの“亜硫酸濃度”を調べられる装置。
という事でまず“亜硫酸”について。
「亜硫酸=酸化防止剤」というのは有名な話。
亜流酸はそれ以外にも、ワインへの影響が沢山ある(良い事も悪い事も)。
《亜硫酸による影響》
1、酸化防止剤
ワイン中で起こる酸化とは…
・EtOH(エタノール)が酸化してCH3CHO(アセトアルデヒド)になる。
・褐色(Brunissement)etc
2、殺菌(Antiseptique)
・細菌(bacterie)などの働きを抑制する。ちなみにワイン発酵の主役である
酵母菌「サッカロミセス・セルビジエ」は亜硫酸耐性を持っているので影響を
受けない。
3、ワインの味、香り(arome)
4、H2S(硫化水素臭)の原因←硫黄臭
これに関しては、醸造の早い段階であれば、ワインを空気に触れさしたり
酵母に栄養を与え消してもらう事により還元できる。
5、色素の安定化
etc…
《ワイン中の亜硫酸》
SO2(二酸化硫黄)+H2O(水)⇔H2SO3(亜硫酸)⇔HSO3-(重亜硫酸イオン)⇔SO3=
①SO2 libre(遊離型亜硫酸)
この部分をすべて合わせたのを遊離亜硫酸とする。
ちなみにH2SO3の状態が一番、亜硫酸としての効果を発揮するので、
これを“SO2 actif”と呼ぶ。
SO2 actifを算出できるサイトがある(仏語)。
興味のある方は、下記をクリックして下さい。
IFV(Institut Francais de la Vigne et du Vin)
SO2 actifはpH、温度、アルコール度数により影響する。
この3点と遊離亜硫酸量を入力するだけでSO2 actif量を算出できてしまう。
〈SO2 actifとの相関性〉
・pH高い=SO2 actif少ない
・温度高い=SO2 actif多い
・アルコール度数高い=SO2 actif多い
・遊離亜硫酸多い=SO2 actif多い
②SO2 conbine(結合型亜硫酸)
SO3が結合型亜硫酸と言われる。糖やアントシアニン、アルデヒドなどと結合し、
人体への影響は証明されていない。
《亜硫酸の分析》
一般的なのが、“ランキン法”と“リッパー法”。
ランキン法の流れ
①Acidification avec H3PO4
リン酸(H3PO4)を加えて強酸性にして、遊離型亜硫酸の大部分を揮発性の分子SO2 にする。
②Entraînement du SO2 par un courant d’air & barbotage dans solution diluée et neutre de H2O2
H2SO3 + H2O2 ⇔ H2SO4 + H2O
空気を吸引し通気させて、出てきたSO2 を、あらかじめTashiro指示薬を入れておいた過酸化水素(H2O2)により酸化させて硫酸(H2SO4)にする。
③Titrage ACIDIMETRIQUE du H2SO4 avec 0,01N NaOH
この硫酸を0.01規定の水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定して、SO2濃度に換算する(遊離亜硫酸)。
※これを加熱して、結合型亜硫酸を算出できる。
その他にヨウ素による滴定“リッパー法(Methode de Ripper)”がある。
この方法は、前述の方法よりも早くて簡単。
しかし、赤ワインの結合型を分析できないのが欠点。
総亜硫酸(遊離型+結合型)はOK。
この方法を用いたのが、今回、最初に紹介した装置。
(お待たせしました…)
小さなビーカーにワインと必要な溶液を入れて、ヨウ素で滴定する。
ボタンが2つあり、Agitation(混ぜる)ボタンとTitration(滴定)ボタンがある。
赤ランプが点灯するまで、滴定し、滴定量から遊離亜硫酸量を算出する。
近年、無添加ワインだとか騒がれている。
これは個人の価値観の問題であると思うし、亜硫酸(特に遊離亜硫酸)に関して言えば
人体に影響がないというのはウソになる。
そりゃ、亜硫酸そのまま飲んだら、間違いなく体に異変が起こるが、そんな事できる人はいない。
フランスでは、亜硫酸添加する時、水溶液を使うのですが(日本では粉末状のメタカリ)、その臭いと言ったら…鼻を近づけたら息ができないほど。作り手が一番危険を被る…。
最終的にワインに残る亜硫酸量のリミットも設けられているし、そのリミットでさえごく微量である。
亜硫酸無添加を推奨する方に異論はないが、私個人としては、わざわざリスクをおうよりはワイン自体が健康的(汚染されないという意味)でスムーズに大きくなってくれたほうが良い。
人間だって、病気予防・治療のために、薬やビタミン剤、栄養剤などを飲む。それも、量が多ければ人体に影響がある。添加物=危険と言われるとちょっと厳しい。
どこのワインメーカーさんも、添加量をできる限り少なめにしたいと思う。
あの亜硫酸過多ワインの香りと言ったら…頭がいたくなってしまう。
ただ、亜硫酸を加えない事により、野生酵母の影響でワインに複雑性が出るのも確かだし
添加物なしで良いワインができるなら、それに越した事はない。
究極を言えば、人が全く手を加えずに美味しいワインが出来るなら万々歳!
だが、それは非常に難しいし、リスクがあまりにも大きすぎる。
まぁ、どっかのお隣さんの国の冷凍食品とかは、安心できないが
ヨーロッパや新世界、日本のワインに関しては気にせず安心して楽しんで飲んで頂きたい。
醸造長に、ちょっと試しにやっといてと言われ
仕事後に組み立てて、使ってみる。
これは、ワインの“亜硫酸濃度”を調べられる装置。
という事でまず“亜硫酸”について。
「亜硫酸=酸化防止剤」というのは有名な話。
亜流酸はそれ以外にも、ワインへの影響が沢山ある(良い事も悪い事も)。
《亜硫酸による影響》
1、酸化防止剤
ワイン中で起こる酸化とは…
・EtOH(エタノール)が酸化してCH3CHO(アセトアルデヒド)になる。
・褐色(Brunissement)etc
2、殺菌(Antiseptique)
・細菌(bacterie)などの働きを抑制する。ちなみにワイン発酵の主役である
酵母菌「サッカロミセス・セルビジエ」は亜硫酸耐性を持っているので影響を
受けない。
3、ワインの味、香り(arome)
4、H2S(硫化水素臭)の原因←硫黄臭
これに関しては、醸造の早い段階であれば、ワインを空気に触れさしたり
酵母に栄養を与え消してもらう事により還元できる。
5、色素の安定化
etc…
《ワイン中の亜硫酸》
SO2(二酸化硫黄)+H2O(水)⇔H2SO3(亜硫酸)⇔HSO3-(重亜硫酸イオン)⇔SO3=
①SO2 libre(遊離型亜硫酸)
この部分をすべて合わせたのを遊離亜硫酸とする。
ちなみにH2SO3の状態が一番、亜硫酸としての効果を発揮するので、
これを“SO2 actif”と呼ぶ。
SO2 actifを算出できるサイトがある(仏語)。
興味のある方は、下記をクリックして下さい。
IFV(Institut Francais de la Vigne et du Vin)
SO2 actifはpH、温度、アルコール度数により影響する。
この3点と遊離亜硫酸量を入力するだけでSO2 actif量を算出できてしまう。
〈SO2 actifとの相関性〉
・pH高い=SO2 actif少ない
・温度高い=SO2 actif多い
・アルコール度数高い=SO2 actif多い
・遊離亜硫酸多い=SO2 actif多い
②SO2 conbine(結合型亜硫酸)
SO3が結合型亜硫酸と言われる。糖やアントシアニン、アルデヒドなどと結合し、
人体への影響は証明されていない。
《亜硫酸の分析》
一般的なのが、“ランキン法”と“リッパー法”。
ランキン法の流れ
①Acidification avec H3PO4
リン酸(H3PO4)を加えて強酸性にして、遊離型亜硫酸の大部分を揮発性の分子SO2 にする。
②Entraînement du SO2 par un courant d’air & barbotage dans solution diluée et neutre de H2O2
H2SO3 + H2O2 ⇔ H2SO4 + H2O
空気を吸引し通気させて、出てきたSO2 を、あらかじめTashiro指示薬を入れておいた過酸化水素(H2O2)により酸化させて硫酸(H2SO4)にする。
③Titrage ACIDIMETRIQUE du H2SO4 avec 0,01N NaOH
この硫酸を0.01規定の水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定して、SO2濃度に換算する(遊離亜硫酸)。
※これを加熱して、結合型亜硫酸を算出できる。
その他にヨウ素による滴定“リッパー法(Methode de Ripper)”がある。
この方法は、前述の方法よりも早くて簡単。
しかし、赤ワインの結合型を分析できないのが欠点。
総亜硫酸(遊離型+結合型)はOK。
この方法を用いたのが、今回、最初に紹介した装置。
(お待たせしました…)
小さなビーカーにワインと必要な溶液を入れて、ヨウ素で滴定する。
ボタンが2つあり、Agitation(混ぜる)ボタンとTitration(滴定)ボタンがある。
赤ランプが点灯するまで、滴定し、滴定量から遊離亜硫酸量を算出する。
近年、無添加ワインだとか騒がれている。
これは個人の価値観の問題であると思うし、亜硫酸(特に遊離亜硫酸)に関して言えば
人体に影響がないというのはウソになる。
そりゃ、亜硫酸そのまま飲んだら、間違いなく体に異変が起こるが、そんな事できる人はいない。
フランスでは、亜硫酸添加する時、水溶液を使うのですが(日本では粉末状のメタカリ)、その臭いと言ったら…鼻を近づけたら息ができないほど。作り手が一番危険を被る…。
最終的にワインに残る亜硫酸量のリミットも設けられているし、そのリミットでさえごく微量である。
亜硫酸無添加を推奨する方に異論はないが、私個人としては、わざわざリスクをおうよりはワイン自体が健康的(汚染されないという意味)でスムーズに大きくなってくれたほうが良い。
人間だって、病気予防・治療のために、薬やビタミン剤、栄養剤などを飲む。それも、量が多ければ人体に影響がある。添加物=危険と言われるとちょっと厳しい。
どこのワインメーカーさんも、添加量をできる限り少なめにしたいと思う。
あの亜硫酸過多ワインの香りと言ったら…頭がいたくなってしまう。
ただ、亜硫酸を加えない事により、野生酵母の影響でワインに複雑性が出るのも確かだし
添加物なしで良いワインができるなら、それに越した事はない。
究極を言えば、人が全く手を加えずに美味しいワインが出来るなら万々歳!
だが、それは非常に難しいし、リスクがあまりにも大きすぎる。
まぁ、どっかのお隣さんの国の冷凍食品とかは、安心できないが
ヨーロッパや新世界、日本のワインに関しては気にせず安心して楽しんで飲んで頂きたい。
2011-09-19 10:00
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